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大阪高等裁判所 昭和56年(う)240号 判決 1984年9月13日

主文

原判決中被告人大元實に関する部分を破棄する。

被告人大元實を罰金一万四〇〇〇円に処する。

被告人大元實において右罰金を完納することができないときは、金二〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

原審及び差戻前第一審における訴訟費用中、別紙一覧表「証人氏名」欄記載の各証人に対し同表「支払期日」欄記載の日に支給した分を、被告人大元實にそれぞれ同表「連帯負担者」欄記載の各被告人と連帯して負担させる。

被告人大元實が昭和四二年一月二四日午前八時ごろ被告人表浦正雄ら一〇数名の者と共同して佐藤岩夫に暴行を加えたとの同年一一月二一日付起訴状記載第四の一の公訴事実(原判示罪となるべき事実第二の一の共同暴行の事実)につき被告人大元實は無罪。

被告人大元實を除くその余の被告人七名に関する本件各控訴をいずれも棄却する。

当審における訴訟費用は被告人らの連帯負担とする。

理由

本件各控訴の趣意は、弁護人佐藤哲外一二名共同作成の控訴趣意書及び弁護人小林保夫外一一名共同作成の「釈明書」と題する書面各記載のとおり(ただし、主任弁護人において以下(1)ないし(4)のとおり釈明した。(1)右釈明書中二の(二)、三の(二)、七の(2)記載の各主張は、いずれも裁判所の職権調査を促す趣旨である。(2)控訴趣意第一は、特定の控訴理由として主張する趣旨ではなく、同第二以下で主張する各控訴理由を理由づける共通の論拠として原判決の判断の基本的な誤りを指摘したものである。(3)控訴趣意第三は、同第四以下の事実誤認の主張に共通する論拠として、原判決が検察官申請の各証人及び各検察官調書の信用性に関する判断を誤つていることを指摘したものである。(4)控訴趣意第九は、もつぱら、原判決第五の事実について、罪となるべき事実に関する事実誤認、違法性に関する法令適用の誤りを控訴理由として主張する趣旨であつて、その余の理由不備、理由のくいちがい等の主張は、右控訴理由を裏付けるための根拠として主張するもので、独立の控訴理由として主張するものではない)であり、これに対する答弁は、大阪高等検察庁検察官検事島谷清作成の答弁書記載のとおりであるから、これらを引用するが、当裁判所は、所論並びに答弁にかんがみ、記録及び証拠物を調査し、当審における事実取調の結果をも参酌して、以下のとおり判断する。

第一本件の経過

本件公訴は、被告人八名のほか寺崎康、竹弘道一、畑中建一(旧姓赤坂)、滝澤輝久男の一二名に対する昭和四二年一一月二一日付起訴状及び被告人金に対する昭和四三年九月一七日付起訴状によつて提起されたものであるが、その公訴事実の大綱は以下第一ないし第八のとおりである(第一ないし第七は、昭和四二年一一月二一日付起訴状の公訴事実第一ないし第七に、第八は、昭和四三年九月一七日付起訴状の公訴事実にそれぞれ相当する)。

第一  被告人小林、同金、同大井、同表浦、寺崎、竹弘が、昭和四一年一二月二五日午後四時二〇分ころ、大阪市南区瓦屋町三番丁六九番地所在の商都交通株式会社(以下原判示会社又は会社ともいう)車庫(以下本社前車庫ともいう)内休憩所において、ほか一〇数名の全国自動車交通労働組合大阪地方連合会(略称全自交大阪地連)商都交通労働組合(以下組合又は本件組合ともいう)員と共謀のうえ、会社人事労務課長中山孝雄に対し、暴行を加え傷害を負わせた事実(傷害罪)

第二  被告人石元、同大井、畑中が、同月二七日、ほか一〇数名の組合員と共謀のうえ、同町四番丁二三番地所在の五階建鉄筋コンクリート造りの会社本社建物の一部にビラをはりつけ建造物を損壊した事実(建造物損壊罪)

第三  被告人金、同大井が、同月二八日、ほか数名の組合員と共謀のうえ、会社本社建物の一部にビラをはりつけ建造物を損壊した事実(建造物損壊罪)

第四

一  被告人大元、同表浦、滝澤、畑中が、昭和四二年一月二四日午前八時ころ、第一記載の会社車庫内において、ほか一〇数名の組合員と共同して、会社営業部次長佐藤岩夫に対し暴行を加えた事実(暴力行為等処罰に関する法律違反罪)

二  被告人表浦、同佐藤、畑中、滝澤が、第四、一記載の日時、場所において、ほか一〇数名の組合員と共謀のうえ、非組合員中本重幸に対し、暴行を加え傷害を負わせた事実(傷害罪)

第五  被告人大井、同石元、同大元、滝澤が、同月三一日午前八時ころ、第二記載の会社本社一階営業部事務室東側修理工場入口付近において、ほか数名の組合員と共同して、佐藤岩夫に対し暴行を加えた事実(暴力行為等処罰に関する法律違反罪)

第六  被告人金、同大井が、同年三月一日午後〇時ころ、第五記載の会社営業部事務室において、ほか一〇数名の組合員と共同して、会社営業課長横山邦雄に対し暴行を加えた事実(暴力行為等処罰に関する法律違反罪)

第七  被告人金、同年増が、同月一五日午前七時五五分ころ、同市生野区巽西足代町一一一番地所在の会社生野営業所内観光部事務室前において、共謀のうえ、非組合員山口弥市に対し、暴行を加え傷害を負わせた事実(傷害罪)

第八  被告人金が、昭和四三年三月一〇日午前八時一五分ころ、第七記載の会社生野営業所の東側路上において、会社従業員の一部をもつて組織する交通労連新商都交通労働組合執行委員中島純義に対し、暴行を加え傷害を負わせた事実(傷害罪)

右公訴の提起を受けた第一審(以下差戻前の第一審ともいう)裁判所である大阪地方裁判所は、検察官が公訴事実第一及び第四ないし第八を立証するため刑事訴訟法三二一条一項二号に基づいて証拠調の請求をした谷口栄一ほか九名の検察官調書合計一八通について、これらが同号に該当しないとしてその証拠調の請求を却下し、公訴事実第一及び第四ないし第七についてはいずれも公訴事実を認めるに足りる証拠がなく、公訴事実第八は正当防衛に該当し、公訴事実第二及び第三は、建造物損壊罪の構成要件を充足するが正当な争議行為であるから労働組合法一条二項、刑法三五条により違法性を阻却し罪とならないとして、全公訴事実につき無罪の言渡をした。

右差戻前の第一審判決全部に対してなされた検察官の控訴につき、控訴審(以下第一次控訴審という)である大阪高等裁判所は、公訴事実第一については、これに関する検察官調書三通の証拠調請求を却下した差戻前第一審裁判所の判断を支持したが、被告人小林、寺崎に関して事実の誤認があるとし、公訴事実第二及び第三については、差戻前第一審判決の判断を支持し、公訴事実第四ないし第八については、差戻前第一審裁判所が、これらの公訴事実に関する検察官調書合計一五通中三通を証拠として採用しなかつた点では法令違反はないが、その余の一二通を証拠として採用しなかつた点で法令違反があるとし(但し、畑中の公訴事実第四の一、二、被告人表浦の公訴事実第四の二については、判決に対する影響を否定するとともに、事実誤認の論旨を排斥)、結局差戻前の第一審判決中、被告人小林(公訴事実第一)、同大元(公訴事実第四の一、第五)、同佐藤(公訴事実第四の二)、同年増(公訴事実第七)、寺崎(公訴事実第一)、滝澤(公訴事実第四の一、二)に関する部分、被告人石元に関する部分のうち公訴事実第五の点、被告人金に関する部分のうち公訴事実第六、第七及び第八の点、被告人大井に関する部分のうち公訴事実第五及び第六の点、被告人表浦に関する部分のうち公訴事実第四の一の点を破棄し、右破棄部分を大阪地方裁判所に差し戻し、その余の検察官の控訴を棄却した(上告取下により確定)。

差戻後の第一審判決である原判決は、右差戻を受けた事件のうち、原審係属中に死亡した寺崎及び滝澤に関する部分を除くその余の部分について、原判示罪となるべき事実第一、第二の一、二、第三ないし第六(公訴事実第一、第四の一、二、第五ないし第八にそれぞれ相当)のとおり有罪の認定をし、被告人八名に対しそれぞれ罰金刑の言渡をした。

第二各控訴趣意に対する判断

(一)  控訴趣意第二及び第一一中原判決が供述調書の証拠能力を認めた点について訴訟手続の法令違反を主張する部分について

論旨は、要するに、原裁判所は、弁護人が証拠とすることに同意していない以下の各供述調書、すなわち西角綱勝の検察官に対する昭和四二年六月三〇日付供述調書(原判示第一の事実関係、関係被告人小林明吉)、横山邦雄(昭和四二年二月三日付)、青山正雄(同年二月一日付及び同年二月七日付)、寺前芳和(同年二月八日付)、南憲治(同年二月二日付―但し却下部分を除く)の検察官に対する各供述調書(原判示第二の一、二の事実関係、関係被告人大元實、表浦正雄、佐藤隆一)、中山孝雄の検察官に対する昭和四二年二月六日付供述調書(原判示第二の二の事実関係、関係被告人佐藤隆一)、横山邦雄(昭和四二年二月八日付)、青山正雄(同年二月九日付)、杉野孝一(同年二月一〇日付)の検察官に対する各供述調書(原判示第三の事実関係、関係被告人大井修、石元敏男、大元實)、横山邦雄(昭和四二年三月一〇日付及び同年三月一五日付)、南憲治(同年三月一五日付)、川上忠夫(同年三月一六日付)の検察官に対する各供述調書(原判示第四の事実関係、関係被告人大井修((但し、横山邦雄の同年三月一〇日付検察官調書を除く))、金太〓)山口弥市(昭和四二年三月二九日付)、朴周用(同年三月二九日付―但し却下部分を除く)、神崎保夫(同日付―但し却下部分を除く)の検察官に対する各供述調書(原判示第五の事実関係、関係被告人年増信行、金太〓)、千言健二の検察官に対する昭和四三年九月一一日付供述調書(原判示第六の事実関係、関係被告人金太〓)をいずれも刑事訴訟法三二一条一項二号該当書面として証拠として採用し、取調べているが、(1)右各検察官調書記載の各供述者らの供述については、いわゆる特信性は認められず、右各供述調書には証拠能力がない、(2)右各供述調書のうち、原審において新たに検察官が証拠として請求した西角綱勝、寺前芳和、南憲治(昭和四二年二月二日付のみ)、杉野孝一、川上忠夫、神崎保夫の前記検察官調書を除くその余の調書については、第一次控訴審判決が、これらの各調書に特信性がないとの理由によりその証拠能力を否定してこれに関する検察官の証拠調の請求を却下した差戻前の第一審裁判所の判断に訴訟手続の法令違反があるとして、これを破棄差戻の理由としているのであるが、破棄差戻判決の拘束力は、破棄の直接の理由、すなわち原判決に対する消極的否定的判断についてのみ生ずるものであり、その消極的否定的判断を裏付ける積極的肯定的事由についての判断、本件についていえば、特信性ありという判断のごときは、破棄の理由に対しては縁由的な関係を有するにとどまりなんら拘束力を生ずるものではなく、しかも事実問題としての色彩の強い特信性の問題について上級審が書面審査のみで破棄差戻をした本件のような場合には、差戻を受けた裁判所は必ず新たな証拠調をしなければならない(そうでなければ、積極的な事実認定ができない上級審の判断をそのまま引き継ぐことになり不合理である)のに、原裁判所が、この点についてほとんど証拠調をせずに右各検察官調書を採用したのは、結局法の要求する特信性がないのに特信性を認めたものといわざるをえない、以上(1)(2)の理由により、前記各検察官調書に証拠能力を認めてこれを採用し証拠として取調べた原裁判所の訴訟手続には法令の違反があり、しかも右各供述調書は、原判決の判示各事実に関する有罪の認定についての重要な証拠資料となつているものであるから、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである、というのである。

よつて案ずるに、記録によれば、所論指摘の各検察官調書合計一八通について原裁判所が刑事訴訟法三二一条一項二号該当書面として採用し(青山正雄の昭和四二年二月九日付供述調書は同号前段の書面として、その余の各調書は同号後段の書面として)その証拠調をしたこと、右各調書中原審において新たに証拠として請求された所論指摘の六通の各検察官調書を除く一二通の検察官調書は、差戻前の第一審裁判所が、青山正雄の昭和四二年二月九日付供述調書については、同法三二一条一項二号前段に準ずるとしつつも信用性の情況的保障がないという理由により、その余の一一通については、同号前段に該当せず、同号後段にいう相反性ありとしても特信性がないという理由により、これに関する検察官の証拠調の請求を却下したものであること、これに対し、第一次控訴審判決は、なんらの事実の取調をせず書面審理のみで、青山正雄の右検察官調書については、同法三二一条一項二号前段の証言不能の一場合にあたるものであつて、かつ反対尋問に代わる信用性の情況的保障を満たしており、同号前段により証拠能力を有すると認められ、その余の一一通については、同号前段の定める証言不能の要件を具備していないけれども、同号後段の定める相反性の要件と特信性の要件を満たしており、同号後段により証拠能力を有すると認められるから、右検察官調書合計一二通につき証拠能力を否定し検察官によるその証拠調の請求を却下した差戻前の第一審の訴訟手続には審理不尽の違法があるとしてこれを判決破棄の理由としていること、以上の事実が認められる。

そこで、まず第一次控訴審判決の判断を経由している所論指摘の一二通の調書について検討するのに、破棄判決の拘束力は、破棄の直接の理由、すなわち原判決に対する消極的否定的判断について生ずるものであり、その消極的否定的判断を裏づける積極的肯定的事由についての判断は、破棄の理由に対しては縁由的な関係に立つにとどまりなんらの拘束力を生ずるものではないが、本件におけるがごとく、刑事訴訟法三二一条一項二号前段の場合に要求される信用性の情況的保障あるいは同号後段の要件である特信性の有無という二者択一的な事柄が判断の対象となつている場合には、破棄判決の消極的否定的判断がその裏付けである積極的肯定的事由を論理的に拘束している関係にあることは明らかである。しかしながら、所論もふれているように、信用性の情況的保障あるいは特信性の有無という事実判断を含む、むしろ事実判断の面の強い事項について、控訴審が書面審理のみでした信用性の情況的保障あるいは特信性があるという積極的肯定的判断に拘束力を認めると、控訴審が第一審の認定していない新たな事実を事実の取調を経ないで認定するのと異ならず、訴訟手続上の事項であるとはいつても同法三二一条一項二号の要件としての信用性の情況的保障あるいは特信性の有無という判断対象は、公訴事実の認定に直結する事柄であることにかんがみると、むしろ第一次控訴審の右積極的肯定的判断は拘束力を有しないと考えるのが相当であると思われる。

のみならず、原審において、弁護人から右一二通の検察官調書に特信性のないことを立証趣旨としてなされた各供述者七名の尋問の請求は撤回されているけれども原裁判所は、右一二通の検察官調書を、被告人金、同佐藤を除くその余の被告人の関係で原審第一二回公判期日において、被告人金、同佐藤の関係で原審第一四回公判期日において、それぞれ証拠として採用する決定をしているところ、その前、検察官及び弁護人双方申請にかかる証人三野精一に対する証人尋問が、争議経過、本件名犯行の段階における争議状況(検察官の立証趣旨)、本件における労使関係と争議の経過、佐藤岩夫らを雇用した経緯と退職の理由、本件争議の解決とその後の労使関係等(弁護人の立証趣旨)という立証趣旨のもとで、原審第六ないし第九回の四公判期日にわたつて施行されており、本件の場合、被告人らの所属する組合側と会社側との争議の経過、被告人ら組合員の行動とこれに対する会社側の対応など本件各犯行の背景事情ともいうべき争議をめぐる実態が、前記各供述調書中の供述に関する信用性の情況的保障あるいは特信性の有無の認定にとつてかなり重要な事情であると認められるから、同証人の立証趣旨に右各供述調書に関する信用性の情況的保障ないし特信性の有無という点が明示されていなくとも、同証人に対する尋問がこれらの点についてのかなり重要な証拠調であることは否定しがたいといわなければならない。そして、原裁判所は、そのほかにも、右各供述調書採用決定前に、証人三木正之を尋問し、右採用決定後取調前に証人寺前芳和、同南憲治、同杉野孝一、同川上忠夫、同神崎保夫を尋問するとともに、各被告人質問を行つた後(これらも又信用性の情況的保障あるいは特信性の有無の判断にとつて無関係であるとは考えられない)、原審第二〇回公判期日において、右供述調書一二通について改めて採用決定をし(その趣旨は、その時点においてもさきの採用決定を維持することを確認した趣旨と解される)その証拠調を施行しているのである。そうしてみると、右供述調書一二通に関する信用性の情況的保障あるいは特信性の有無については、第一次控訴審判決による破棄差戻後、原審において新たに実質的な証拠調がなされているということができ、この点からも、右各供述調書の証拠能力に関する第一次控訴審の破棄差戻判決の判断には拘束力がないものといわなければならない。

しかしながら、原審において取調べた証拠を含め記録を精査検討しても、第一次控訴審判決が右各供述調書の証拠能力について詳細に説示しているところはすべて正当であつて、なんら変更すべき点は認められず、したがつて、原裁判所が、右各供述調書一二通を、青山正雄の昭和四二年二月九日付検察官調書については同法三二一条一項二号前段により、その余の供述調書一一通については同号後段により採用し、その証拠調をしたことも又正当であると認められる。従つて、右各供述調書に証拠能力を認めこれを採用して証拠調をした原裁判所の訴訟手続に所論の法令違反はない。

<中略>

第三各控訴理由の存否に関する結論と自判

以上説示のとおり、本件控訴趣意中、被告人大元實の原判示第二の一に関する事実誤認の論旨は理由があり、原判決は、右事実に関する罪と同被告人に関する原判示第三の罪とが併合罪の関係にあるものとして同被告人に一個の刑を科しているのであるから、原判決中同被告人に関する部分は、その全部について破棄を免れない。よつて刑事訴訟法三九七条一項、三八二条により原判決中同被告人に関する部分を破棄し、同法四〇〇条但書により更に判決することとし、同被告人の原判示第二の一(昭和四二年一一月二一日付起訴状記載の公訴事実第四の一と同一の事実)の共同暴行の事実については、同被告人が罪を犯したと認めるに足りる証拠がないから同法三三六条後段により同事実について無罪の言渡しをすることとし、同被告人に関し原判決が認定した原判示第三の事実について法令を適用するのに、同被告人の右所為は、行為時においては暴力行為等処罰に関する法律一条(刑法二〇八条)、昭和四七年法律第六一号による改正前の罰金寺臨時措置法三条一項二号に、裁判時においては暴力行為等処罰に関する法律一条(刑法二〇八条)、右改正後の罰金等臨時措置法三条一項二号に該当するが、右は犯罪後の法令により刑の変更があつたときにあたるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、所定刑中罰金刑を選択し、その所定罰金額の範囲内で同被告人を罰金一万四〇〇〇円に処し、同被告人において右罰金を完納することができないときは刑法一八条により金二〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとし、原審及び差戻前の第一審における訴訟費用については刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条を適用して主文第四項記載のとおり同被告人に負担させる。その余の被告人に関する本件各控訴はいずれも理由がないから刑事訴訟法三九六条により右各控訴を棄却する。当審における訴訟費用については同法一八一条一項本文、一八二条により被告人八名に連帯負担させることとし、主文のとおり判決する。

(石松竹雄 石田登良夫 安原浩)

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